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2013年03月28日

ネットと愛国−在特会の「闇」を追いかけて−


「Shame on you(恥を知れ)」「Osaka against racism」「仲良うしまひょ」
3/24日、道頓堀橋の上に、こんなプラカードを上げる集団が現れた。御堂筋を南下してくるデモ隊は、「日韓断交」「朝鮮人出ていけ−」などと喚いているが、正直聞き取れない。まあ、あまりに酷すぎて聞く気にもなれないのだが・・・
日本に居住する、日本国籍を持たない人。その最大集団がコリアン(朝鮮籍、韓国籍含む)であることは言うまでもないだろう。「在日」という言葉は、文字通り「日本に在る」ことを指すだけのはずなのだが、「在日コリアン」を指すと解釈されることが多い。

その「在日コリアンだけが特権を持っている」と主張し、「特権を取り上げろ」と主張するのが「在特会(在日特権を許さない市民の会)」だ。日本人多数を抑圧するような「特権」とやらが本当に存在するなら、それは許されないし、無くす努力をすべきだろう。しかし彼らがやっているのは「殺せ」「タタキダセ」「ゴキブリ」などと、ただ「そこに済んで普通に生活している」だけの在日コリアンに、暴力としか言えない罵声をただ浴びせ続けるだけなのだ。
(むろん、彼らの主張する「特権」とやらは妄想の産物にすぎない)

中でも彼らの存在を世間に知らしめたのは、京都での朝鮮学校襲撃事件だろう。何の理由があるにせよ、授業中の初等学校(日本の通常教育では小学校・幼稚園にあたる教育をしていた)を取り囲み、トラメガでがなり立てて威圧、授業妨害を行うというのは許されることではない。
(刑事裁判では侮辱罪、威力業務妨害での有罪判決が出ている)


この「在特会」について知る、最大かつ唯一といってもいい書籍がこの「ネットと愛国」である。著者安田浩一氏の粘り強く緻密な取材にはとにかく頭が下がる。読むとわかるのだが、「在特会」・・・いや、在特会に参加したり賛同したり、あるいは一時的には参加したが今は離れてしまった人たち、すなわち取材対象に対して安田氏は「寄り添う」姿勢をとにかく貫いているのだ。
実家の家族や出身校の同級生にまで当たり、「かつてはどんな人だったのか」を知る。あるいは一緒に酒を飲む。一人ひとりにスポットをあて、人間としての悩み、ジレンマなどに切り込む。様々な側面が見えてくると、「悪人」として切り捨てるだけでは済まないものを感じる。すなわち、この日本社会全体が抱えている歪みである。しかし、だからこそ、それに対する怒りを見当違いの人たちに向け、傷付ける行為を許すわけにはいかない。叱り飛ばし説教するしかない。

登場するのは在特会だけではない。在特会を含む「行動する保守」界隈や、ネット上で「愛国」を語る人たちの拠り所となっていた「チャンネル桜」など、周辺の有名どころもしっかり取材している。在特会に力を与えることになった彼らが、今では在特会を批判しているという変化も興味深い。


インターネットの発達によって顕在化した闇。
「普通の人」の心に潜む差別意識。

そんなことについて考えさせられる良書。差別・人権・人種問題などに関心を持つなら必読でしょう。
定価1785円ですが、kindle版なら今、なんと250円と激安!
ぜひ、たくさんの方に読んでほしいと願います。



posted by KEN-NYE at 22:29 | TrackBack(0) | 読書感想文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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