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2012年06月10日

#生活保護 叩きで得するのは誰か、困るのは誰か?

まず最初に言っておきたいのは、「生活保護をバッシングして得をするのは、予算を減らしたい役所や政府。困るのはまともな受給者と、本来受給すべき人。不正で利益を得ているような神経の太い人はバッシングされた程度では困らない」ということです。


「とある芸人の母親が生活保護を受給していた」週刊誌記事から、議員による実名挙げての「生活保護制度の不備」バッシングが行われ、ネットでも過熱しています。

この騒動について、WSJの記事を見ながら、自分なりの分析をしてみたいと思います。
http://jp.wsj.com/Japan/Economy/node_457236

この記事中にもあるように、発端となった河本氏の件は、「違法ではない」ものと見られます。
河本氏に非があったとすれば、貧困状況にある母親に対して、その収入に対して充分な孝行ができていなかった、というモラル的な部分でしょう。また、贅沢を自慢した言動があったとのことで、それが事実なら批判には値するでしょうが、生活保護自体を叩くのは筋違いですね。

また、別の吉本芸人も母親が保護を受給していたという報道があり、芸人叩きが吉本叩きに発展している感が強いですが、これも上記と状況は似たようなものかと思われます。


さて、WSJ記事の後半では、このような類似例は支給額の0.4%に過ぎない、という指摘が掲載されています。
数字の正確性については諸説あるでしょうが、少なくとも圧倒的多数の受給者は正当であるということでしょう。

経済協力開発機構(OECD)によると、日本の社会保障支給額は米国とほぼ同水準だが、欧州をはるかに下回っている。入手可能な最新のデータによると、2007年には日本は生活保護支給にGDPの1.3%を費やした。米国の場合は1.2%、フランスは3.7%、ドイツは2.7%だった

とあります。生活保護費については予算の4%と負担が大きいのも事実ですが、社会保障全体を「大盤振る舞い」しているような印象は間違いである、ということですね。


確かに不正受給は問題です。また、せっかく生活保護をもらっても、パチンコに注ぎ込んでしまって進歩しない人がいるのも確かです。その解決のために必要なのは、「質の高いケースワーカーを、多人数確保する」ということに尽きるでしょう。不正がなく、必要な人に支給が行き渡るための調査。就労可能なら就労を促すなど、生活を改善する指導、アドバイス。これらがケースワーカーの役割です。

また、経済の問題はより重要です。国内の受給者数はこの15年ほどで急増しています。90年代後半で80万世帯ほどだったのが今200万世帯を越えているわけですから、約2.5倍です。この間に何があったのかというと、消費税の3%→5%への増税、構造改革などによるデフレ経済です。派遣労働の一般化などで、特に若者の間では非正規雇用化が進み、可処分所得の低下が著しいです。そのため内需が冷え込み、よりいっそうのデフレを招く事態になっています。このまま消費税を10%に上げるような無茶をすれば、生活保護の対象者はさらに激増して、国家財政の悪化を招くでしょう。

ネット上の議論では、きちんと調べもせず、デマを根拠に叩く事態が多発しています。
社会に不満があるのはわかりますが、弱者が弱者を叩くのでは強者がほくそ笑むだけでしょう。
(「河本氏は弱者ではない」という意見もあるでしょうが、彼を叩くことで萎縮しているのは正当な受給者、あるいは正当な受給者であるべきにも関わらず受給していない人ばかりです)


WSJ記事のラストはこう締めくくられています。

 立命館大学で社会保障を教える山本忠教授は、「社会保障、雇用の問題を解決しなければ、貧困は生活保護でうけとめるしかない。それがなくなると、ホームレスになるか、餓死するしかない」との見方を示した。

あなたは「おにぎり食べたい」事件を覚えているでしょうか。


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posted by KEN-NYE at 18:33 | TrackBack(0) | おかたいはなし | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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